三角形と内接円に関する性質
こんにちは。
今回は初等幾何の問題と三角形と内接円に関する面白い(?)性質について書こうと思います。今回の記事は大学の某サークルで遊んでいた問題が元ネタです。
その問題は「\(\bigtriangleup ABC\) において\(BC=3\) , \(\angle B=45^\circ\) とする。この時,辺\(BC\) 上の点\(D\) を\(BD:DC=1:2\) となるように取ると\(\angle ADC=60^\circ\) となった。このとき、\(\angle C\) の大きさを求めよ。」というものでした。図に起こすと以下のようになります。
この問題を小学生の知識だけで初等的に解けというのが某サークルでの遊びでした。(どこかの中学入試か何からしいですが詳細は分かりません)
この問題の解答とは別に、センター数学っぽい図だなと思って何か面白い性質ないかなと思って半日くらい遊んでいたところ、ふと以下の図みたいに三角形と内接円を取ったらどうなるのかなと気になりました。 つまり、次のように問題設定します。
「\(\bigtriangleup ABC\)において\(BC=3\), \(\angle B=45^\circ\), \(\angle C=75^\circ\) とする。この時,\(\bigtriangleup ABC\) の内接円と辺\(BC\) との接点\(E\) を足とする辺\(BC\) の垂線を考え, この垂線と内接円の点\(E\) 以外の交点を点\(F\) とする。さらに,直線\(AF\) と辺\(BC\) との交点を点\(G\) と定める。このとき, \(\angle AGC\)の大きさを求めよ。」
以上二つの解答は後回しにするとして、二つの三角形と最初の図での点\(D\) 、次の図での点\(G\) の位置関係が似ているような気もします。 解答は後述しますが、実は\(\bigtriangleup ABC\)において\(\angle B=45^\circ\), \(\angle C=75^\circ\)と定めた場合には最初の図での点\(D\) と二つ目の図での点\(G\) は一致します。すると当然\(BG=CE=1\)が言えます。
実は一般の三角形についても二つ目の問題のように点\(E,F,G\) を定めたときに\(BG=CE=1\) が成立していることが言えます。ちょうどセンター試験の季節だったので、(高校同期に送り付ける目的もあって)以上の話を問題にまとめてみました。
結構面白いと思ってTwitterにも上げましたが、誰も解いてくれていなくて悲しいです。 それでは解答を見ていきましょう。
解答編
(1)については座標を置いたり余弦定理でゴリゴリ計算したりもできますが、折角なので初等的に解きましょう。解答は端的に表せば以下の図のようになります。
図の通りなので解説は省略しますが、答えはそれぞれ\(\angle C=75^\circ\), 外接円の半径\(R\) は\(R=\sqrt{3}\) となることが分かります。結構綺麗に求まって非常にうれしい気分になれます。
次は(2)を考えましょう。試していないので分かりませんが、(2)は(1)以上に余弦定理でごちゃごちゃ実際に長さを経由してやると大変そうです。 あくまでも初等的に解きたいので辺\(AC\) を\(C\) 側に延長した直線上にある点\(P\) を考え、正三角形\(\bigtriangleup ABP\) を考えます。ついでに点\(P\) から内接円に対して接線を引きましょう。この接線と辺\(AB\) の交点を\(Q\) とします。とすると、図は以下のようになります。
ところでこの内接円が正三角形\(\bigtriangleup ABP\) のうちの二辺に接していることを思い出せば、\(\bigtriangleup QBP\) と\(\bigtriangleup CPB\) は、\(\bigtriangleup ABC\) の内点を点\(I\) とすると直線\(AI\) に対称です。これより、適当に角度の計算をしてやれば\(\angle AGC=60^\circ\) であることが示されます。結局(1)の点\(D\) と(2)の点\(G\) は一致しているので\(BG=CE=1\) となります。結構綺麗になりました。
(3)は(2)で考えたことの一般化です。 \(PQ=PR\) の時は二等辺三角形になって成立していることが分かるので\(PQ>PR\) のときを考えましょう。とりあえず点\(P\) から辺\(RQ\) に垂線を下ろしてその足を点\(H\) としましょう。すると\(\bigtriangleup PHW\)\(\sim\) \(\bigtriangleup TSW\) ですから\(PH:WH=TS:WS\) となります。
ここでそれぞれの辺の長さを\(p,q,r\) とおくと、内接円の性質から\(SR\) は\(SR={p+q-r}/2\)となります。 先の比例式は内接円の半径を\(r_I\) とおき、\(PH=q\sin{\angle R}\), \(WH=SR+SW-RH\) であることに注意すれば、
\begin{align*} PH:WH=TS:WS \end{align*} \begin{align*} \leftrightarrow WH\cdot{q\sin{\angle R}} =2r({\displaystyle \frac{p+q-r}{2}} +WS-q\cos{\angle{R}}) \end{align*} となります。\(r_I\) が邪魔なので三角形の面積を二通りで表して\(r_I\) について解くことにしましょう。
\begin{align*} S={\displaystyle \frac{r_I(p+q+r)}{2}}={\displaystyle \frac{pq\cdot{\sin{\angle{R}}}}{2}} \end{align*} \begin{align*} r_I=\displaystyle \frac{pq\cdot{\sin{\angle{R}}}}{p+q+r} \end{align*}
これを先の不等式に代入します。すると今度は\(\cos{\angle{R}}\) が邪魔なので余弦定理を使って消してしまいます。ごちゃごちゃ計算すると \begin{align*} QS=r-q \end{align*} となるので \begin{align*} QW=QS-SW=\displaystyle \frac{p+q-r}{2} \end{align*} となり\(QS=RW\) は示されました。
結果は綺麗だと思いますが、(3)の証明はごり押した感じがするのでもっと綺麗な解き方を見つけられると良いですね。